小説『大菩薩峠』 その不思議な魅力に迫る!

こんにちは、吉井良平です。

娘が合唱団に入っていて、夏休みは発表会やらイベントが多く、送り迎えに忙しくしております。

合唱団の練習中、ヒマなので前々から気になっていた『大菩薩峠』という小説を、青空文庫からダウンロードしてみたのですが・・・

面白いです。

不思議な魅力があります。

どっぷりはまってしまって、この3日間で7巻まで読んでしまいました。(と言っても、41巻まであります^^)

 

今回は、この奇書(?)『大菩薩峠』の魅力を語ってみたいと思います!

青空文庫で無料で読めるので、夏の暇つぶしにはピッタリです。『バガボンド』(井上雄彦のマンガ)なんかが好きな人は、楽しめると思います!

『大菩薩峠』とはどんな小説か?

 

そもそも『大菩薩峠』とはどんな小説かというと、1913年~1941年まで、なんと28年間にわたって都新聞、毎日新聞、読売新聞など連載場所を変えながら書かれた、幕末を舞台とした時代小説です。

主人公は、机竜之助(つくえ りゅうのすけ)という剣士で、かんたんに言ってしまうと、彼が殺人を犯して故郷にいられなくなって、いろんなところを放浪するわけです。その放浪の間に起こった出来事が書かれています。

竜之助を「兄の仇(かたき)」と追ってくる宇津木兵馬という若者や、お爺さんを殺されたお松さんという娘の話など、いろんな話がごちゃまぜになって、なんだかよく分からない一つの世界を作っています。

本当、話があっちに行ったり、こっちに行ったりするのですが、ご都合主義的に全員が一つの場所に集まったりすることもあって、大騒ぎになることもあります^^

(物語の後半は、主人公そっちのけで、脇役が主役になるようですけど)

 

作者は中里介山という方で、1885年(明治18年)生まれです。

文学者だったら武者小路実篤(白樺派の人)や、柳原白蓮(花子とアンに出ていた蓮子様のモデル)、北原白秋(詩人)、社会主義者の大杉栄や女性運動家の平塚らいてうなどと、同年代です。

日露戦争に勝利して、日本の国力がどんどん上がっていった時代に青年期を迎えた、いろんな新しい感性が生まれてきた時代ですね。

 

大菩薩峠とは、旧青梅街道の峠で、武蔵国(東京都)側と甲斐国(山梨県)側との頂上になります。

物語の始まりは、大菩薩峠での机竜之助の殺人から始まりますが、それ以降、この峠自体はほとんど話に登場しません。それで28年も連載してるという・・・

この辺の行き当たりばったり感も、この小説の魅力です。

 

不思議な魅力に迫る!

 

僕もいろんな小説を読んできた方ですが、何というかこの『大菩薩峠』は独特というか、不思議な魅力があります。

ちょっと、どんな点が独特なのか、考えてみました。

 

文体が独特

『大菩薩峠』は、「ですます調」と「である調」が混在しています。

主人公の机竜之助が登場した場面を引用すると、

歳は三十の前後、細面で色は白く、身はやせているが骨格はさえています。この若い武士が峠の上に立つと、ゴーッと青嵐が崩れる。谷から峰へ吹き上げるうら葉が、海の浪がしらを見るようにさわ立つ。そこへ何かしらん、寄せ来る波で岸へ打ち上げられたように飛び出してきた小動物があります。

全編、こんなような調子です。

大衆文学なので、当時流行っていた講談調なんだと思いますが、これが独特のリズムを生んでいるんですよね~

芥川龍之介なんかも同じ時期に作品を発表していますが、帝大出身のエリートが書く文章とは違って、庶民的でとても読みやすいです。

 

この時代の小説で現代でも残っている作品は、”文学的”なものが多いですが、より一般的な大衆小説は現代では忘れ去られているんですよね。

大正期、昭和前期の日本語文化の代表として、もっと読まれて良い、知られて良い小説だと思います。

 

人があっけなく死ぬ

現代だと、人が死ぬということは、特別なことですよね。小説でも、人の死については重い題材になります。

この大菩薩峠では、あっけなく人が死んでいきます。ものすごく軽いタッチで死の場面が書かれていきます。

まぁ、大体が主人公の趣味が「辻斬り」で、言ってみれば無差別殺人ですからね~

そんなの、現代ではあり得ません。

「あっちへ向け」

この声もろともに、パッと血煙が立つと見れば、なんという無残なことでしょう、あっという間もなく、胴体全く二つになって青草の上にのめってしまいました。

(中略)

「おやおや、人が斬られている!」

「よく斬ったなぁ、これだけの腕前をもってるヤツが、またなんだってこんな年寄りを手にかけたろう」

大体、こんな感じです。

机竜之助は、自分の内縁の妻を手にかけるのですが、その時も

竜之助はついにお浜を殺してしまいました。

たった一文です。

軽い、軽すぎる・・・

 

善悪で言えば悪の要素が強い人物が多いのですが、あっけらかんと書かれてしまうと、不思議なもので明るく感じてしまうんですよね~

主人公の名誉のために書いておくと、たまに思い出したかのように良いことをすることもあります。それで、それなりに女性にもてます。

現代だったら、アダルトチルドレンと言われているかもしれません。

 

フラットな目線

フラットというのもなんだか抽象的な表現ですが、この『大菩薩峠』に出てくる登場人物って、特殊な人が多いのです。

主人公からして人殺しですし、盗賊もいれば、発達障害の人、非差別部落の人、道楽旗本、遊廓に売られる人、嫉妬狂いの人、等々、社会の主流から外れた人々が出てきます。

そんな人々をけなすでもなく、持ち上げるでもなく、淡々と登場させて、淡々と描写していきます。

価値観がフラットというか、どちらが良いとか決めつけてない、むしろそんなことはどうでも良いという感じで、無造作に描写が続いていきます。

 

昔の小説なので表現規制も緩やかで、今だったら差別用語で自主規制するような表現が次々に出てきますが、読んでいてほとんど気になりません。

こういう感覚も、良きにつけ悪きにつけ、現代では失われた感覚で、読んでいて不思議な気持ちになります。

 

その他、幕末を舞台とした小説なので、新撰組とか出てきます。こういった実在の人物が話の中に登場してきても、安心して読みすすめることができます。

司馬遼太郎の小説だと、中で書かれていることが史実なのか創作なのか、読んでいて不安になることがありますが、大菩薩峠では全く気になりません。

主人公が創作なので、エピソードも創作です^^

まぁでも、作者の中里介山が小説を書き始めた時代には、まだ幕末を経験した人が60代、70代で生き残っている時代なので、感覚的に幕末の雰囲気を掴んでいたことは間違いないでしょう。

 

登場人物関係図

 

あらすじを書くよりも、登場人物がどんなに入り乱れているのか?を書いた方が面白いかな、と思って、2巻までの登場人物の関係図を作ってみました。

大菩薩峠人物相関図

最初の2巻分です

これで、まだ2巻までだけですが、かなり人間関係が入り組んでいます。都合よく、みんな出会ってしまうのです!

基本的には、机竜之助に対する宇津木兵馬の仇討ちがベースなんですが、新しく出てくる登場人物それぞれに物語が出来てくるので、膨大な量になってきます。

 

この後、お松と兵馬が出会って同じ仇ということで協力したり、七兵衛と兵馬が協力することになったり、お松が一旦預けられたお花の師匠と机竜之助が一緒に行動したり・・・

登場人物同士が出会って、引っ付いたり離れたり、もう訳が分からなくなりそうですが、これがちゃんと頭に入ってくるというのが、この小説のスゴイところです。

もう仇討の緊張感などまるで無くなっても、いろんな登場人物が話を回していって、小説は続いていくのです・・・

 

最後に

 

まだまだ、私が読んでるのは41巻分の7巻までで、ここからどんどん訳が分からない世界が加速していくらしいです。

途中で挫折する人もいるみたいで、僕も挫折するかもしれませんが、またいつか、この続きを書いてみたいと思います!

ヒマつぶしになることは間違いないので、興味が湧いた方は青空文庫やキンドルなどで、ダウンロードしてみてください^^

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ABOUTこの記事をかいた人

昭和48年広島県生まれ。現在も広島に住んでいます。 趣味は音楽鑑賞(邦楽、洋楽問わず、クラシック、童謡も)、マンガです。エクセルを効率的に使う方法を紹介して、あなたのお役に立ちたいと思っています。